【初心者必見】知らなくて本当に大丈夫?バードウォッチングの魅力

入門編

公園や植物園に行くと、空に向かって双眼鏡やカメラを構えている人と出会うことがありますよね。

そこで初めて、ここには鳥がいるんだ、そう言われてみればさっきから鳥の声が聞こえていたかも…?と気付いたりもします。

最近ポピュラーになってきた鳥カフェや、フクロウがたくさんみられる動物園。そういった施設のお陰で、珍しい鳥を間近で見たり触れあったりする機会が増えてきました。でも実は、普段歩いている街中や近くの公園でも、鳥たちと出会う機会が意外とあるのです。

野鳥は野生動物の中で一番観察しやすい仲間。そして何より種類が多く、色や形、大きさや生態もさまざま。そんな鳥たちが織りなす世界が私たちのすぐ頭の上にあることを、あなたは気づかずに日常を送っています。この記事を最後まで読めば、自分にとって最適な野鳥との関わり方や楽しみ方が見つかりますよ。さあ、一緒に野鳥観察の扉を開いてみましょう!

バードウォッチングってどんな趣味?

バードウォッチングを趣味にする人は、まず鳥や生き物が好きな人だと思います。

 

野鳥が暮らしている場所にこちらから出かけていって、肉眼や双眼鏡、耳などで観察し、図鑑で調べ、写真やノートに記録する、そんな地道な活動の中にいろいろな面白さが詰まっているのがバードウォッチングの魅力です。

 

自分の中に「野鳥を見た」という体験しか残らず、面白さを他人とシェアしにくいかもしれません。その性質上、他の趣味と違ってブームになりにくいので、一見何が面白いのかわかりにくいかもしれませんね。

 

この記事では、そんな知られざるバードウォッチングの魅力を少しでも皆さんに伝えられるよう、一つ一つ紐解いてみたいと思います。

 

バードウォッチングを始めたきっかけは?

 

ここで筆者の話を少しさせていただきますね。私の経験の中に、みなさんの中にも通じる点や、思いもよらなかった点があればと思います。

 

私は小さい頃から鳥が好きでした。

山間の小さな住宅地に住んでいたこともあり、何の鳥かわからないまま、たくさんの鳥の鳴き声を聞いて育ちました。

 

ある時、ガレージにヒヨドリが迷い込んでしまったことがあり、これはヒヨドリを捕獲して間近で見るチャンスだ!とばかりに追いかけ回したこともあります…(野鳥の捕獲は鳥獣保護法で禁止されているので決して真似をしないでくださいね)。

 

もう少し白状すると、庭に米粒を撒いて、ざるにつっかえ棒を立て、その棒につけた紐の反対側を持って物陰に潜む…という漫画のような捕獲作戦を断行したこともあります。野鳥からしたら自然の餌がたくさんあるのに、突如現れた怪しい仕掛けの餌に寄りつくわけもなく、小学生だった私の根気はあっさり尽きたのでした。

 

私の、「野鳥を間近で、できれば手の上で、まじまじとみてみたい!」 という願いが叶うのはそれからずっと後になります。

 

北海道の大学に進み、とある離島で、鳥類標識調査を見学させてもらう機会がありました。

 

(「鳥類標識調査」は、野鳥を捕獲して足輪をつけ、その鳥が次にもし別の場所で捕獲されることがあれば、その情報から渡りのルートを解明するという国際的な取り組みです。日本では環境省が実施しており、認定を受けた調査員(バンダー)がボランティアで調査を行っています。)

林の切れ目に霞網という繊細な網を張り、網に気づかずに通過しようとして引っかかった野鳥を、なるべく負担がかからないように手早く網から外し、体長などを計測して足輪をつけ、再び離します。

 

標識調査の現場はとても緊張しています。うっかり気を抜くと、野鳥を霞網から外す時に傷を負わせてしまったり、網にかかった鳥が猫に襲われたりする可能性があるからです。

 

野鳥の計測を終えて、野に離す前のほんの少しの間だけ、手の上に乗せてもらうことができ、そこで初めて野鳥を手に取って図鑑と比べたり、柔らかさや温かさを感じるこができたのは素晴らしい体験でした。

 

それ以降、遠くの方でシルエットしかわからない鳥を見つけても、手の上で観察した経験があったおかげで、どんな仕草や行動をしているかが想像できるようになり、識別する楽しさがどんどん膨らんでいったと記憶しています。

 

標識調査という調査が行われていて、専門の資格を持った調査員がボランティアで携わっているということを知っておくと、いつか調査に立ち会う機会があるかもしれませんね。

 

バードウォッチングは何が楽しいの?

 

バードウォッチングはなぜハマってしまうのか、理由を考えてみました。

 

上級趣味である

 

上級趣味と突然言ってしまいましたが、これは私の造語です。これはバードウォッチングを趣味にすることが偉いという意味ではありません。

 

バードウォッチングは、いくつかのスキルを組み合わせて行う活動です。

 

例えば、野鳥がいる場所に行くだけでも、いろいろなアクティビティが絡んできます。近所をお散歩する、起伏のある散策路をトレッキングする、高山に行く、など、一つのアクティビティだけで一つの趣味として成り立つほどです。

 

移動:お散歩、トレッキング、ドライブ、登山、野宿(キャンプ)、海外旅行

機材:双眼鏡、カメラ

自然条件:気象、天気、地理、地形、植生

一つのスキルだけを使う趣味を基本趣味だとすると、バードウォッチングはそれらをいくつか組み合わせて行う上級趣味だと言って差し支えないと思います。RPGでは上級職という、いくつかの職業を経験しないとなれない職業がありますよね、ちょうどそんな感覚です。たくさんのスキルを身につけているほど、また、それぞれのスキルが高いほど、出会える野鳥の種類やシーンが増えます。

 

私の友人で大学の同期だったK君は、小さい頃からバードウォッチングが趣味でしたが、大学で登山部に入り、ロッククライミングのスキルを身につけてからは、普通の人がアクセスできないような断崖絶壁に営巣する野鳥の調査を依頼されるようになりました。

 

バードウォッチングは幅が広く、奥が深い世界なので、自分に合った楽しみ方が見つかり、深掘りできるところが趣味として取り組み甲斐があると言えますね。

 

収集欲や達成感を満たしてくれる

 

見た事がある種類の鳥を増やして行くことは、収集家がコレクションを充実させるのと似たような楽しみがあります。

 

いわゆるバードウォッチングマニアの中には、ライフリストと言って、自分が今までにみた事がある鳥をリスト化している人がいます。ライフリストを充実させることをバードウォッチングの目的にしている人もいます。

 

見たかった憧れの鳥や、滅多に飛来しない鳥と出会うことができたら、とても感動しますよね。

 

ライフリストの多い人は、そういった感動をたくさん経験した人、ということができると思います。

 

ライフリストを充実させることもバードウォッチングの魅力の一つなので、見たことのある鳥をノートに記録して行くのも良いかもしれませんね。

 

とにかくバードウォッチングを始めてみよう

始め方その① とにかく出かけてみる

野鳥には興味があるけど、双眼鏡がないから、、、という理由でバードウォッチングを始めるのに躊躇しているあなた、気持ちは分かります。

 

安いものだと使い物にならないというレビューもあるし、かといって本格的なものは重かったり高価だったりして、まだバードウォッチングの面白さもよくわからないのに無駄な買い物になってしまわないだろうか、と心配になりますよね。

 

双眼鏡の選び方は別の機会に譲るとして、ここでは一旦「野鳥を観察しなければならない」というプレッシャーは手放し、自然が感じられるエリアに散歩に出掛けてみるのも良さそうです。

 

出掛ける先は、野鳥が多い場所に越したことはありませんが、今回はなにぶん丸腰での散策です。仮に野鳥が見つからなかったとしても、「気持ちよく散歩できたからよしとしよう」「鳥が見つからなかったら、残念賞ということでお気に入りのカフェでケーキを食べて帰ってこよう」というセーフティネットを用意しておくと、次回また出掛けるときのもちべーしょんに繋がるように、自分の好きな場所、気持ちいいと思えるような場所を行き先に選びましょう。

 

それでも、どこに出掛けたらいいかわからない、、、という方は、近くにこんな場所がないか、調べてみてください。

 

公園(遊具がある公園よりは、森林や草地、水辺があるような自然公園)

植物園・動物園

自然散策路

川沿いのジョギングコース

神社やお寺の境内

 

実際にフィールドに出てみると、何かの鳥が鳴いていたり、枝の間を飛び回っていることに気づくと思います。

 

その時に、頑張って種類を特定しようとすると、飛び去ってしまったり、何の鳥かわからず悔しい気持ちになるかもしれません。

 

初めのうちは無理をして鳥を見分けようとせず、「こんなところに鳥がいるんだな」「こんな鳴き声の鳥がいるんだな」くらいでいいと思います。

 

私は最初、北海道の天売島(1)という、日本のバードウォッチング愛好家なら誰もが憧れる場所でバードウォッチングを始めました。

 

天売島は周囲12キロほどの小さな島ですが、日本でみられる約600種の野鳥のうち、240種がみられる(2)と言われている、野鳥の聖地のような場所です。

 

(1)天売島について 天売島.jp https://www.teuri.jp/

(2)天売島の野鳥について 日本野鳥の会ホームページ https://www.wbsj.org/activity/conservation/habitat-conservation/miba/miba-01_teuri/

たくさんの鳥が見られるということは、逆に初心者にとっては識別が難しいということになります。

 

最初は、どの鳥も灰色のシルエットしかわからず、いつになったら先輩のように、一瞬で何の鳥か言い当てられるようになるのか、道のりの遠さに途方に暮れたものです。

 

バードウォッチングを始めたばかりの人は、おそらく同じような課題にぶつかると思いますが、その時に見た姿や耳にした鳴き声の経験は、後から必ず身を結ぶので、あまり焦らずに、野鳥がいる環境を丸ごと楽しむような気持ちでいてくださいね。

 

4−2 始め方その② 図鑑を眺めてみる

実は私のおすすめの始め方はこれ、最初に図鑑を買ってみることです。

 

日本にはおよそ600種類の野鳥が記録されています。

 

野鳥の図鑑を開いてみると、その多様さにきっと驚くでしょう。パラパラっとめくってみると、「えっ、今の鳥、何?」と思ってしまう鳥がいると思います。

 

私は、全く野鳥の興味がない姉に写真の野鳥図鑑を見せてみたところ、「何、このショッカーみたいな鳥は。」「何なん! 女装してるやんこの鳥!」など、新鮮な驚きがたくさん出てきました。

 

その中から、いつかみてみたい憧れの鳥がきっと見つかると思います。もしかすると意外と近くで見られる可能性もあります。

 

また、図鑑を普段から眺めていると、野鳥を識別する力がメキメキついてくるので、その点でもお気に入りの図鑑を一冊持っておくことはおすすめですね。

 

それでは、どんな図鑑を選べば良いでしょうか。大きく分けると、イラスト図鑑と写真図鑑とがあります。写真図鑑の方が詳しくて良いように思えるますが、初心者におすすめなのは、イラスト図鑑の方です。

 

写真図鑑は、その種類のたくさんの個体のうちの、たった1羽の鳥が代表して掲載されています。その写真の画像を頭に入れても、実際の野外での識別の際に、自分のみた個体と一致しにくいのです。

 

それに対してイラスト図鑑は、たくさんの野鳥観察の経験を持ったイラストレーターが、この鳥はこんな感じに見えることが多い、という脳内の画像をもとに作画しています。その画像を頭に入れておいた方が、実際に野鳥を発見した時に、判別に役立つのです。

 

ここでは、私が天売島へ住み込みでフィールド調査に行く前に、先輩から買っておけと言われた図鑑を紹介します。野鳥の特徴をしっかり捉えてイラストに表現されており、かつコンパクトで野外に容易に持っていけるので、野鳥観察をする人なら必ず1冊は持っていると言っても過言ではない図鑑だと思います。

 

https://www.amazon.co.jp/フィールドガイド日本の野鳥-高野-伸二/dp/493115042X/ref=sr_1_4?adgrpid=54048288460&dib=eyJ2IjoiMSJ9.3UlVDvzKehXlLhCjThI1T7RWXdsen9Fj752GgK7XzI5sQqriw77BQfvisJu-7AwPvOi5TKu6bors5aJoT6iPegBwCEkII27yF6Y-M8BPsrYkCv8G8gnJHMOamn1nh0ibN-lzTpjkcX7F6bv94nl48ryCltHzpyexlWIe5hLxko2PtYO_ocNUKopgPcdeY4pkFj6XwkOhPMq6zNmbQ9hq96zuk20GzTT46JQPqL5usSI.KaxYNaD3v68UC6m2H8JXu2qq8FpMU_n-cYzK39M_X2E&dib_tag=se&hvadid=679124449886&hvdev=c&hvexpln=0&hvlocphy=1009501&hvnetw=g&hvocijid=16479393564349920060–&hvqmt=e&hvrand=16479393564349920060&hvtargid=kwd-333481033120&hydadcr=27706_14738821&jp-ad-ap=0&keywords=フィールドガイド日本の野鳥&mcid=f49a770e551d315d9c09d2f120876d5d&qid=1751372971&s=books&sr=1-4

 

識別能力の上達を急がないのであれば、写真図鑑を見ながら多様な野鳥の世界を楽しむのももちろん良いと思います。

 

他にも生態などが詳しく書かれた大きな図鑑や、特定の種類について、面白いエピソードを交えた読み物的な図鑑もあるので、2冊目以降、欲しくなった時にそういった図鑑を揃えていくのも楽しいですよ。私はイラスト図鑑、写真図鑑、読み物図鑑を順番に購入し、それぞれ使い分けています。

 

始め方その③ 双眼鏡を買ってみる

私がネイチャーガイドをしていた時代、双眼鏡を手にした事がない方に、その使い方を教える機会が多くありました。最初は扱いに戸惑うものの、肉眼で見える景色とレンズの向こうに広がる世界のあまりにも大きなギャップに、例外なく通り息を飲まれます。

 

双眼鏡は、単に遠くの物が大きく見えるというのとは少し違います。目に入る光の量=情報量が増えるのです。

 

人間の目の瞳孔の直径は4ミリなのに対して、双眼鏡は小さな物でも20ミリ以上あります。ここから計算すると、双眼鏡を使うことで目に入ってくる情報量は25倍! 肉眼だと灰色のシルエットにしか見えなかった鳥も、双眼鏡があると色彩や特徴がわかるのはこのためです。

 

バードウォッチングを趣味にするなら、是非とも愛着の持てる1台の双眼鏡をお供に加えたいところです。

 

とはいえ、たくさんの種類の双眼鏡が出回っていて、どれを選んだらいいか迷ってしまいますよね。

 

双眼鏡を選ぶポイントをまとめてみました。

 

倍率

 

文字通り、双眼鏡で覗いた物が何倍に見えるか何倍に見えるかを表す数値です。野帳観察に使うなら8倍から10倍が適当です。

 

倍率が高い方が大きく見えて良いように思いますが、逆にデメリットとして、本体が大きく重くなる、見え方が暗くなる、視野が狭くなる、手ぶれの影響が大きくなるなどが挙げられます。

 

私は大学時代に先輩から、「森の鳥を見るなら8倍、水鳥や猛禽類を見るなら10倍」と教わりました。

 

コンパクトな双眼鏡は後々出番も多いので、最初は8倍を目安に選ぶのがおすすめです。

 

ちなみに倍率を変えられる双眼鏡は視野が暗いので、野鳥観察用としてはオススメしません。

 

口径

 

双眼鏡のスペックに、8×30などの数値が書いてありますが、この「30」というのが対物レンズ(見たいもに向ける側のレンズ)の直径(口径)です。

 

双眼鏡の口径が大きいほど、視野が明るくなり、目に入る情報量が増えるので、鳥を識別しやすくなります。ただ、口径が大きくなった分だけ本体の大きさと重量が増えるので、悩ましいところです。

 

調査のために野帳観察をする場合は、曇りの日や薄暮時など、厳しい条件で鳥を識別する必要がありますが、始めたての頃は気軽に持ち出せる大きさ、重さを選びましょう。

 

携帯性

 

倍率や口径と表裏一体になっているのが携帯性です。口径が小さくてもレンズの構成やコーティングに独自の技術を採用して視野が暗くならないようにしているメーカーもあります。コンパクトな双眼鏡を選ぶ際は、視野の明るさに注意しましょう。薄暗い時間帯などシビアな条件で観察する必要がない場合は、携帯性を優先しても良いと思います。

 

耐久性・防水性

 

耐久性や防水性の高い双眼鏡は、高額だったり重かったりすることがあります。ただ、知らずに扱って壊してしまうと残念なので、購入する前に確認し、性能に配慮して扱うようにしましょう。

 

値段

 

双眼鏡は高価な買い物になるので、納得した上で機種を選びたいのは当然だと思います。まず、双眼鏡の値段は何で決まっているのか考えてみましょう。

 

倍率や口径・・・大きいほど使用するレンズの枚数や使用する部材が多くなるので高くなります。

 

軽さ・丈夫さ・・・軽くて丈夫にするために高価な素材を使用しています。

 

見えやすさ(明るさ、視界の歪み・滲みの少なさ)・・・見えやすくするために独自のレンズの設計や反射防止コーティングを施しています。

 

一概には言えませんが、同じスペックなら、高級な機種の方が、軽さ、丈夫さ、見えやすさに違いが出てくると言えます。

 

そういった見えやすさを販売店の店頭で比べるのはなかなか難しいので、おすすめなのは、後述の観察会に参加してみることです。参加する前に、双眼鏡を持っていない旨を伝えれば、相談に乗ってくれますし、他の参加者が使っている双眼鏡や、それを選んだ理由などを聞くことができます。実際にフィールドで使ってみて、これだと思うものが決まるまでは焦って買う必要はないので、失敗も少ないですよね。

 

初心者の場合はそれほど高いものでなくとも十分な性能を持った双眼鏡が発売されているので、気軽に使うことを優先して双眼鏡を選びましょう。

 

ちなみに、娘が野鳥を見たいと言ってくれた時に、私が喜び勇んで買った双眼鏡はこちらです。

 

https://www.amazon.co.jp/KOWA-コーワ-双眼鏡-YFII30-8-8x30mm/dp/B08DR3Y522

 

小さすぎると扱いにくくなるので、適度な大きさで、信頼できるメーカーであり、野鳥を双眼鏡で観察する楽しさをサポートしてくれる道具であるという観点から選びました。

 

その他の機能

 

スタビライザーや写真撮影機能が付いている双眼鏡がありますが、自分のバードウォッチングのスタイルが決まるまではシンプルな機種を選ぶ方が良いと思います。

 

バードウォッチング初心者が必ずぶつかる壁

初心者の壁その① 鳥が見つけられない

これはバードウォッチングをしていると絶対に避けられない壁です。軽井沢野鳥の森で毎日ガイドをしていた私でも、1時間半の間に1羽も野鳥に遭遇しないままガイドが終わってしまうことも少なくありませんでした。

 

初めのうちは、自分のスキルが低いせいで野鳥と会えなかったのかと思うかもしれませんが、そもそもそこに野鳥がいなければ会うこともできないので、あまり深く考えないようにしましょう。

 

漠然と鳥を探すよりも、見つけたい鳥がしそうな行動をイメージして散策すると、鳥を探す動きにも変化が生まれて退屈しないかもしれません。以下に森林や草原の野鳥が好きそうな行動を例に挙げてみました。

 

水辺・・・水中から羽化して出てきた昆虫などを食べに集まる

草原・・・草の種を食べに集まる

木・・・鳥が好きそうな実をつける木に集まる

地面・・・落ち葉の中の虫を啄みにくる

 

初心者の壁その② 見つけた鳥が何なのか分からない

これも野帳観察を始めた頃にあるお悩みです。私も最初の頃は、ほぼ全ての鳥がグレ一色のベタ塗りに見えました。

 

これは、自分の頭の中にリファレンス(鳥を見た時に脳内で参照する情報源)が不足しているからです。

 

あなたが鳥を見つけた時、視覚に入った情報を頼りに、脳の中の図書館に、それが何の鳥か探しに行きます。

 

その図書館の中に、鳥に関する情報が、カラス、スズメ、ハトの3種類しかなかったら、何の鳥が分からないままになっています。

 

例えばジョウビタキのメスを見つけたとしましょう。過去に、ジョウビタキのメスを図鑑で1度だけ見たことがある程度だと、頭の中にあるジョウビタキのメスの情報がぼんやりしたままなので、たとえ見つけたとしても「スズメのようなサイズで、スズメほど模様がはっきりしていない、茶色っぽい鳥」という判断になってしまいます。

 

それが、イラスト図鑑と写真図鑑の両方でジョウビタキメスのページを何度か見ている、インターネットやYouTubeでジョウビタキのメスの画像を見たことがある、というように、ジョウビタキのメスに関する情報が頭の中に蓄積していくと、野外で突然ジョウビタキのメスに出会ったとしても、識別することができます。

 

今は比較的簡単に野鳥の映像を見ることができるので、普段からそういった動画や写真に触れる機会を増やすと、ある日を境に急に鳥が識別できるようになりますよ。

 

初心者の壁その③ 鳥に逃げられる

 

野鳥は野生の哺乳類と比べて人間の近くまでやってきますが、それは飛べるという手段があるからです。

 

しかし、野鳥の方も、人間の視線は確実に意識しており、不穏な空気を感じたらいつでも飛び去る準備をしています。

 

ここでいう不穏な空気は、例えば人間が野鳥の方をずっと見つめて目を離さない、などです。

 

とはいえ見つめないことには観察できないので、ここは難しいところです。

 

私の経験では、野鳥にとって、見つめられてもなるべくそこにいたい理由、例えば貴重な食べ物がある、水浴びができる、群れで行動していて他の鳥の行動に合わせている、といった場合に比較的近くで観察できることが多い気がします。

 

また、春先などは、森林の野鳥は求愛や縄張り争いに忙しい季節です。遠くからでも目立つ小枝に止まって高らかに囀ったり、縄張りの境界で掴み合いの喧嘩する様子を驚くほど近くで観察できることがあります。

 

他にも、霧雨や濃霧など、一瞬我々もあまり出かけたくないな、と思ってしまうようなお天気の日に、野鳥たちも警戒心が緩むのか、思いがけず近くでじっくり観察できることもあります。

 

最初のうちは野鳥に逃げられることをあまりネガティブにとらえず、観察を続ける上で少しずつ距離感を養っていきましょう。

 

初心者の壁その④ 何の鳥の鳴き声か分からない

 

野鳥を観察し始めると、鳴き声で何の鳥かわかるようになったらいいな、と思う時がやってきます。

 

鳴き声も、姿と同じように、頭の中の情報量を増やせばわかるようになってくるので、普段から鳴き声の動画やCDを聴いておくと、より早く鳴き声で識別できるようになるでしょう。

 

一つ注意しておきたいのは、鳥は求愛用の鳴き声(さえずり)と、それ以外のコミュニケーションのための鳴き声(地鳴き)を使い分けています(厳密にはもっと細かく鳴き分けていますがその説明は別の機会に譲ります)。さえずりは種類によって違いが明らかなので識別しやすいのですが、繁殖期のオスしか囀らないことや、地域によってさえずりに差があるので、必ずしもCDで聴いた鳴き声と一致しないこともあります。それでも基本的なさえずりを頭に入れておくことで、何の鳥なのか、大体の見当をつけることができます。

 

一方、地鳴きはオスもメスも年中鳴きますが、鳴き声が小さく短い、種による違いがわかりにくい、など、聞き分けるのに難しいところがあります。

 

それでも鳴き声を聞き込んでいくうちに、自然と何の鳥かわかるようになるので、BGMを聴くような気持ちで鳴き声CDを聴くのが良いでしょう。

 

筆者は、何の鳥の地鳴きか全然わからないまま野鳥を追いかけていたら、突然姿を

表してくれたお陰で種類と鳴き声が一致した、ということがよくありました。そうやって自分の体験から生まれた識別能力は、身につきやすいものです。

 

自分らしいバードウォッチングのスタイルを見つけよう

 

スタイルその① 身近な鳥をじっくり観察する

近くに公園や河川敷などがあれば、そこに通ってじっくり野鳥を観察するのがおすすめです。比較的都市部でも年中見られるシジュウカラやイソヒヨドリは、運が良ければ子育てをする様子なども見られるかもしれません。

 

筆者は軽井沢の森でシジュウカラの暮らしをじっくり観察したことがあります。じっくり観察していれば、羽の模様の特徴で、個体まで識別できる場合があります。

 

繁殖期なら縄張りを持つ鳥もいるので、見た目の識別が難しくても、同じ場所で囀っている個体なら同一である可能性が高いと言えます。

 

観察に慣れてくれば、個体識別をしてみると、ぐっと野鳥との距離が短くなり、愛着も湧きますよ。

 

スタイルその② 観察会に参加する

 

野鳥の会などが主催している鳥の観察会(探鳥会と呼んでいます)に参加するのもおすすめです。野鳥を見つけやすいコースが設定されていますし、自分一人で見つけるのは難しくても、ガイドの方や、ベテランの参加者が場所を教えてくれます。双眼鏡や望遠鏡を覗かせてもらえる機会もあるかもしれません。

 

いきなり初心者が参加して浮かないかな、、、と心配するかもしれませんが、バードウォッチングを楽しんでいる人は、その楽しさを人とシェアしたいと少なからず思っているので、きっと温かく迎えてくれます。

 

スタイルその③ ライフリストを充実させる

 

ライフリストは、前述の通り、自分が今までにみたことがある野鳥の種類を記録したものです。今までにみた事がない鳥を見るために、遠出をしたり、高山や山奥に分け入ったりしているバードウォッチャーもいます。

 

私としてはライフリストに拘る必要はないと思いますが、目標を決めて何かに取り組むのが好きな方は、ライフリストの種数を目安に鳥をみてみるのも良いと思います。ちなみに300種類見たら一人前という説もありますが、日本で記録されたことのある野鳥の種類が600弱なので、その半数ということになりますね。300に達しなくても十分一人前だと私は思います。

 

野鳥のノートを作って、観察した日付、場所、周囲の環境、行動などを記録しておくことは、後から見返すと新しい発見があって良いと思います。

 

スタイルその④ 野鳥を撮影する

 

野鳥を撮影することは大きな魅力ですが、それなりのカメラやレンズ、三脚などの機材が必要になるので、まずは自分が野鳥を撮影する目的(どんな気持ちを味わいたいのか)を考えてから、機材選びをしましょう。

 

引き伸ばして額に飾りたい、鳥だけではなく背景や環境にもこだわった写真を撮りたい、スマホで友達にシェアしたい、野鳥観察ブログに載せたい、など、一口に野鳥の写真を撮るといっても目的はさまざまです。

 

羽毛の一枚一枚を鮮明に捉えたり、まるで時間が止まっているように一瞬の姿を捉映しこむには、プロも使用しているような高級な機材が必要になるので、最初から予算を準備して必要な機材を買った方が、無駄な買い物をしなくて済みます。

 

そのような機材は大きくて重くなるので、撮影する目的のために野鳥を探しにいく、というスタイルになります。

 

あくまでも散策がてら野鳥を観察して、記録の意味で撮影できたら良いと考えている場合は、本体とレンズが一体になった高倍率ズームを搭載したカメラでも事足ります。もしブログを運営する予定がある場合は、自分の書きたい内容に、どの程度の写真が必要になりそうかも、考えておくと良いですね。

 

バードウォッチングをするときに注意すべきこと

 

ここまでバードウォッチングの魅力や楽しみ方をお伝えしてきましたが、バードウォッチングをおすすめすると同時に、知っておきたいマナーも合わせて知っていただきたいと思います。

 

野鳥との距離感を大切にし、一線を踏み越えない

 

野鳥が自然に振る舞えるよう、自分が野鳥に近づきすぎていないか常に意識しましょう。バードウォッチングに夢中になると、ついつい追いかけていきたくなりますが、それはNGです。中には子育てを邪魔してしまったり、育雛を放棄させてしまったりする可能性もあります。巣に近づきすぎると、わざと傷ついたふりをして注意をそらせたり、メスでもさえずって警戒したりすることがあります。野鳥のそういった行動を観察したら、すぐに引き下がって、相手の行動に影響を及ぼしすぎていないか考えましょう。

 

野鳥の観察場所を無闇に公表しない

 

珍しい鳥を見ても、どこで観察できたかネットやSNSで公表するのは避けましょう。それを見つけた人がたくさん集まってくると、野鳥の生活を脅かせたり、近隣住民にとって迷惑になったりすることがあります。

 

双眼鏡のマナー

 

こちらとしては鳥をみつけるための双眼鏡や望遠鏡でも、バードウォッチングをよく知らない大多数の人にとっては、何をしているのか、双眼鏡でプライバシーが侵害されはしないか、訝しく感じさせてしまうことがあります。

 

不要な誤解やトラブルを避けるためにも、住宅地などの近くでは双眼鏡類の扱いに気を使い、できれば鞄の中にしまっておくのが良いでしょう。

 

まとめ

 

バードウォッチングに興味を持った方にとって、バードウォッチングの始め方や楽しみ方をまとめてみました。

 

まだバードウォッチングをしてみたことがない方に、文章でその魅力を伝えるのは私にとっても初めてのことでしたが、何とかうまくお伝えできたかなと思います。

 

単に野鳥を見ると言っても、自然環境についての知識や野外での行動などいろいろなスキルを組み合わせて行うので、奥が深い趣味だということはお分かりいただけたでしょうか。その分、自分が好きだったり得意な分野からバードウォッチングを始められるというメリットがあります。

 

とはいえ一歩を踏み出すのに少し躊躇してしまうという方も、まずは手ぶらで鳥の気配を感じるだけでも楽しいですし、図鑑を眺めることで面白い発見があったりします。そんなかなで自分にぴったりの双眼鏡を手に入れれば、より多くの野鳥と出会え楽しさが増します。

 

また、野鳥を見つけ、識別できるようになるまでは少し時間がかかりますが、それでも観察を続けると、確実に経験値は上がり、知らず知らずのうちに鳥の姿がよく見えるようになるので、あまり焦らずにバードウォッチングを楽しむのがいいと思います。

 

そして、初めて誰の手も借りずに、自分の力で野鳥と出会い、その姿をじっくり観察できた時の感動は、きっと一生の思い出になりますよ。

 

この記事を読んでくださったあなたに、そんな幸せな瞬間が訪れることを願っています。

 

ぜひ、自分に合った楽しみ方を見つけて、バードウォッチングの扉を開いてみてくださいね!



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